Grand Cru Club

Actualités - GCC便り

Vins - Que choisir

フランスの消費者雑誌« Que Choisir » 2015年10月号に偽物ワインについての記事が出ていました。収穫量や品種ごとの実の出来具合でAOC規定の生産量や配合率に違反しても同業者は目をつぶる、出来上がったワインが美味しければいいんじゃない? と同情的な記事でした。
グラン・クリュ・クラブの目隠し試飲で味覚・嗅覚を鍛えましょう。

« Vins – Des fraudes qui font tache (ワイン – 不正がつけるしみ) », Que Choisir N°540 – Octobre 2015, p.42 の要点

  • フランスでの不法行為の例:
    A)品種の偽り:2010年ラングドックのメルローとシラーをピノノワールとしてアメリカへ輸出
    B)産地の偽り:2013年ヴォークリューズとラングドックの葡萄から作ったワインをボルドーとして販売
    C)醸造中の違法:2009年ボジョレーでの加糖
    その他、DuboeufやGiscoursを含め5件例示。
  • フランスでは人体に害のある不法行為は無い(イタリアでは死亡者・失明者の出た例があった)。
  • 試験所で詳しい分析をすれば、葡萄の育った地域や使われた樽の産地の絞り込みが可能だが、費用がかかるので全てのワインを検査することはできない。
  • 品種を偽って売っても違いの分る消費者はいない。「騙された被害者がいなければ詐欺は成立しない」という裁判での弁護。ローヌやボジョレーでは県道を越えただけで葡萄の価格が4倍にも上がる。2009年のボジョレーで許容量より多く加糖した生産者は、天候不良で不作の年の特例措置(dérogation)が認められると考えていた。2013年春の悪天候のためボルドーは不作、ローヌや南西地方から葡萄を掻き集めた業者があった。
  • 品種や産地を変えるとちょっと高く売れるからという誘惑に負ける人が稀にいるだけで多くの生産者は正直者。
  • 今は合法でも問題視されている醸造過程もある。例えば酵母(果実味を増したり香りをつけたり、ビオ・ワイン用もある)の追加。例えば低温製法(甘いワインを造る過程で、未熟な実を凍らせてアルコール度を高める)。
  • ヒトの味覚・嗅覚ではワインを判別できない事を示したGil Morrotの4つの実験。

    テスト1
    10人のソムリエに18種のワインの6つの産地(ボルドー、ブルゴーニュ、南西地方、ラングドック、ローヌ、ロワール)を当てさせる。結果:平均誤答数13、最高誤答数18。

    テスト2
    8人のソムリエに18種(内17種は名の知れたワイン、1種がテーブルワイン)のワインを順位付けさせる。結果:8人の順位付けは一致せず。テーブルワインは低い評価が多かったが最下位にしたのは一人だけ。18種中7位と評価したソムリエもいた。

    テスト3
    ワイン初心者グループとパリの有名レストランのソムリエグループに、3杯のグラスワインを試飲させる。毎回3杯のうち2杯が同じワインで1杯が別物、どれが違うワインかを判別させる。結果:全問正解者は無し。初心者とプロの回答結果に顕著な差は無かった。

    テスト4
    54人のワイン醸造学生に白ワインと赤ワインを試飲させる。1回目の試飲で複数の学生が赤にカシスやイチゴを、白にレモンや花、藁の香りを感じた。2回目の試飲、白と赤だが、赤の方は白ワインを着色したもの。学生たちが「赤」に感じるとして挙げた特徴は1回目の赤ワインの時と同じで、ごまかしに気付いた者はひとりもいなかった。
  • フランス以外での不法行為の例:

    D)アメリカ人醸造学者Maureen Downeyが飲まされたラフィット・ロチルド1961年の偽物は、1964年物のラフィット・ロチルドのラベルの「4」を削り落として「1」に見せかけたものだった。

    E)同氏による偽物が多いワインTOP16
    ロマネコンティ、アンリ・ジャイエ、ジャブレのラ・シャペル・エルミタージュ、ドメーヌ・デュジャク、シュヴァルブラン、ペトリュス、ラフィット・ロチルド、ラトゥール、ムートン・ロチルド、ラフルール、ルパン、ポムロールのラトゥール、ライヤス、他イタリアワイン3種。

    F)フランスのグラン・ヴァンの偽造販売で米国で有罪となったRudy Kuruniawan事件。ブルゴーニュの生産者ローラン・ポンソが、自家が生産を始める前の年代のワインが売らていることに気付いて偽造が露見した。

(須藤)

須藤 秀章
1986年にAcadémie du Vinでワインに開眼。CIDDのAlain Segel氏によるワインと料理の組み合わせ(Mariage)に感動して以後、自らも垂直試飲・平行試飲を中心とする比較試飲会を企画。在パリのワイン愛好者が集まっての試飲会を1991年にGrand Cru Clubと名付ける。
1995年より日本でも試飲会を開催。パリでの試飲会にワイン生産者を招いたり、産地を訪問して葡萄の生育や醸造への理解を深めるツアーを企画したり、ワインのもたらす楽しみを少しでも多くの人と分かち合うために情熱を傾けている。

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