Actualités - GCC便り
コルシカらしからぬワインを求めて ~第2弾~
昨秋ポルトヴェッキオのワインバー « Vin137 » で、「コルシカワインで驚かせて!」と注文したら出してきたのが Domaine Pinelliの赤、Campo Vecchio 2019。果実味豊かでなめらかなタンニン、酸とのバランスもよく、南のワインとは想像しづらい。
是非生産者に会わねば、と、コルシカ北部に突き出した半島の付け根辺り、海辺の町サンフロランから丘陵へ入る。
マリ-シャルロット・ピネリさんは、1990年代まで祖父がワインを作っていた畑で自分のワインを作ると8年前に決意。Castaに4ha、Olettaに2ha持つ畑にコルシカの伝統品種であるNiellucciu(赤)、Vermentinu(白)、Muscat(白)を育てている。
「母の日の仕度があるからあまり時間を取れなくてごめんなさい」とことわりながらも、次々試飲させてくれる。
白はVermentinu 100%。期待できる香り…と口に含んだら思わず笑みがこぼれた。濃縮度が濃いのに飽きずに飲み続けられる危ないヴェルメンティーノ。この作り手特有のエレガント感が印象的。
Campo VecchioはNiellucciu 100%。
葡萄の実だけでなく種まで十分熟すのを待って収穫し、皮も種も茎も一緒にマセラシオン。
その後はコンクリートのタンクへ。可能な限り自然発酵させ、濾過も清澄もしない、亜硫酸もごく僅かしか入れない。
豊かな果実味、なめらかなタンニン、酸とのバランスよくエレガントな飲み口。自然派にありがちな不快臭も無い。新しい境地の減農薬自然派と位置づけたい。
「これも飲んでみて」と注がれたMuscat。普通のミュスカは酒精強化ワインを添加して糖分を残すが、ここはワイン製法で醸造。葡萄の糖度をギリギリまで上げてバランスを取っているので重くなく、チーズとの相性が抜群。
果汁からも果肉からも種からも出てくる葡萄の味わいをワインに生かしたい。ブドウ栽培から瓶熟成まで、各工程の説明にその強い意志と熱意が感じられる。
醸造所と貯蔵室を拡張工事中で、今1年の樽熟成を2年に、瓶熟成を1年にしたいそう。
注目の作り手だ。
(須藤)
須藤 秀章
1986年にAcadémie du Vinでワインに開眼。CIDDのAlain Segel氏によるワインと料理の組み合わせ(Mariage)に感動して以後、自らも垂直試飲・平行試飲を中心とする比較試飲会を企画。在パリのワイン愛好者が集まっての試飲会を1991年にGrand Cru Clubと名付ける。
1995年より日本でも試飲会を開催。パリでの試飲会にワイン生産者を招いたり、産地を訪問して葡萄の生育や醸造への理解を深めるツアーを企画したり、ワインのもたらす楽しみを少しでも多くの人と分かち合うために情熱を傾けている。