Grand Cru Club

Actualités - GCC便り

La Revue du Vin de France誌6月号に、Pierre Vila Palleja氏(パリでレストランを経営するソムリエ)の自然派ワインについての意見寄稿がありました。参考になると思いますので概要をご紹介します。

Pierre Vila Palleja

「自然派」ワイン:テロワールと欠点をごっちゃにするのは止そう!

(La Revue du Vin de France n°612 – 2017年6月号より)


「自然派」と言われるワインはよくビオやビオディナミと混同されるが、自然派生産者は、醸造と熟成の過程で亜硫酸を全くまたは殆ど使わない。「なるべく葡萄の果実に近く」ピュアな香りとボリュームのある味わいを出すため、だと言う。

だが、亜硫酸は自然に存在する、瓶内熟成を安定させるにはまたとない物質である。亜硫酸がなければ、自然派ワインは壊れやすく、長期熟成や輸送に不向きで、何より多くの欠陥や変質が発生しやすくなる。

確かに、ジュラのGanevatや北ローヌのAllemandはデリケートな自然派ワインを成功させているが、めったに真似できるものではない。土地の気候や土壌や伝統に従って、大多数の生産者は失敗を避けるため亜硫酸を加えざるを得ない。

ワインの醸造・熟成に失敗しないためには、特に亜硫酸を加えない場合、厳格さ、完璧な衛生環境、収穫時の徹底した選果、還元現象の上手な利用が求められる。

Stéphane Derenoncourtの醸造学者Simon Blanchardに言わせれば「非干渉製法(うまくいっていないことが多いが)を口実に、味の画一化を招いている生産者がいる。異なる地方のワインを味わってその類似に驚くのは、欠点だらけであるせいだ。」

残念なことに昨今、多くの生産者、ソムリエ、カヴィスト、鑑定家が、自然派ワインの欠陥を、許容できる欠点とかテロワールの表出などと、すすんで認める傾向にある。消費者情報を気遣う飲食店主として非常に苛立たしい。以下に、自然派ワインによくある香りを化学的に同定し、それが示す欠点を要約した。

グアッシュ絵具や丁子(Ethyle 4 galiacol)あるいは汗(Ehyle 4 phenol)の香りは、醸造所が不衛生か、赤ワインなら醗酵不足に起因するブレタノマイセス酵母の変質。

熟れ過ぎたりんごかシードル香がしたら、酸化とアセトアルデヒトの存在が考えられる。

つんと来る酢の香りは揮発酸で、酪酸と共に酸敗バターやチーズの皮の臭いを発するようになる。

除光液かマニキュア香があれば、エタノールが劣化して酢酸となり、酢酸エチルが生じている。酒蔵の不衛生に起因することが多い。

胡桃やカレー香は、ソトロン(hydroxy-3diméthyl-4,5 2 (5H))である。

毛や尿の臭いがしてねっとりしているのは、乳酸菌によるもの。

こすったマッチ、キャベツ、玉葱、腐った卵(メルカプタン)は、空気不足や澱が多過ぎて起こる還元(酸化の逆)を示していることが多い。

ワインのどんな味わいを好むかは自由だが、頼むから欠点をテロワールだと語るのは止めてほしい。

(須藤)

須藤 秀章
1986年にAcadémie du Vinでワインに開眼。CIDDのAlain Segel氏によるワインと料理の組み合わせ(Mariage)に感動して以後、自らも垂直試飲・平行試飲を中心とする比較試飲会を企画。在パリのワイン愛好者が集まっての試飲会を1991年にGrand Cru Clubと名付ける。
1995年より日本でも試飲会を開催。パリでの試飲会にワイン生産者を招いたり、産地を訪問して葡萄の生育や醸造への理解を深めるツアーを企画したり、ワインのもたらす楽しみを少しでも多くの人と分かち合うために情熱を傾けている。

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